2011年3月11日。あの日誰もが未曾有の災害に言葉を失い、感じた悲しみと絶望。あすか製薬の工場もまた福島県いわき市に位置し大打撃を受けた。激しくつづく余震と見えない放射能の恐怖。物流・交通機関は麻痺し誰もが工場での製造中止を覚悟しただろう。しかし、あすか製薬の薬を待つ甲状腺機能低下症の患者にとっては死活問題であった。なぜならこの治療薬で国内シェア98%を占めていたからだ。
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さまざまな情報が錯綜するなか、震災直後から既にクライアントは製造再開に向け工場調査や原料調達に工場に泊まり込みで奔走していた。我々がこの世の終わりを予感している時に、震災を受け止め、とっくに歩みだしていたのだ。さらには復興の証にと品質管理棟の計画もされ、幸運にも我々はその委託を受けた。
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クライアントの姿勢に深く共感した我々は、他企業に見られるような閉鎖的な品管棟ではなく、あすか製薬のステークスホルダーがここに訪れ復興を実感できる開放的な施設を提案した。またPIC/S GMP基準がグローバル標準になりつつあり、さらに厳しい管理システムの確立が急務とされるなか、これらの状況をいち早く対応し最先端の機器が整備されている施設と、活き活きとした研究員の姿を透明感溢れた建築で積極的に「見せる」QC/QAラボラトリーを目指した。
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