連携を高め一体感を生み出すしかけ
人が健康的に生きるために、呼吸する、食べる、といった行為は根源的な営みでありその意味では、食は命とも表現できるだろう。食品分析開発センターSUNATECの検査棟は、食品の安全性を分析するまさに我々の命を守る施設である。
クライアントからは「老朽化した施設を刷新し、従業員が誇りを持って働ける場にして欲しい」「絆を持って一体感ある雰囲気にしたい」との依頼であった。そこで我々はラボでの連携を高まるよう、可能なかぎりオープンで一体的に広がった大空間のラボを中央に設置し、両側に各分析室機能を持った部屋を配置する計画とした。
多くの分析機器が設置され精密な検査を行う施設では、検査精度に影響しないよう常に安定した室内環境が求められる。そこで本施設の分析エリアでは窓の開口面積を極力抑え、共用部に向けて徐々に解放されるというデザインにした。共用部とラボの境界は可能な限りガラス張りとし、共用部を通じた優しい光をラボ空間に取り込むようにしている。外装のガラスには太さや間隔を微妙に調整した万線をシルク印刷処理し、穏やかな光を拡散させて室内に取り込んでいるため、従業員や来訪者は一度その柔らかな光に包まれてから各検査室に入ることになる。
また検査内容に応じてラボのレイアウトを効率的に可変できるよう、可動式のヒュームフードユニットをオリジナルで設計し導入した。これによりフレキシビリティの向上はもとより、これまで屋外排気していた空気を高機能フィルターで処理し室内に循環しているため、設備負荷の大幅な軽減が実現している。
クライアントはワークライフバランスの取れた職場環境を推進しており、本プロジェクトで我々は隣接した建物に託児所と子供達が安心して遊べる外構の設計も同時に行った。元気な子供たちの声と、植樹したシンボルツリーから小鳥のさえずりが聞こえる、そんな生命を感じる最先端な検査棟になるだろう。
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