静寂的と活気が同居する
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なぜ僕たちは眠るのだろうか?人間だけではなく象やイルカやアザラシや、豆科の植物も眠るという。
睡眠の研究ははじまったばかりで、まだ多くの部分が解明されていない。柳沢正史教授が率るIIISは文部科学省が行う「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」の一つであり、本施設は世界で活躍する第一線の研究者を集め、この謎に包まれた睡眠のメカニズムについて解明する研究所である。
計画地は筑波大学内にあった手付かずの森のなかである。その森のなかをかき分け進むと小さな池があり水面には木漏れ日が揺れていた。名も知らぬ大木の枝を風が駆け抜け、サササと心地よい葉すれ音が響く。この静寂的な環境と、開放的で活気に満ち溢れた研究環境が同居する、まさに睡眠と覚醒の関係性をもった研究所をつくりたいと思った。
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5階〜6階の上層部は主にマウスが住む施設で、小さな行動や変化を観察するバリア施設とし、森の樹々に最も近づく4階〜2階をラボとオフィスとすることで、研究者は人工では決してつくり得ない木漏れ日の揺らぎに包まれて、自然を密接に感じながら研究を行うのである。
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眠る豚の親子が飛ぶ、建物中央の吹き抜け周辺には、コーヒーを飲みながら思いついたアイデアを自由に書き留める落書きスペースを設置した。各階を結ぶ吹き抜けの螺旋階段で1Fまで降りると、池に面したデッキテラスへ繋がる。そこでは世界トップクラスの研究者たちが集い、程よく緊張感がほどけた心地よい環境で、未知なる睡眠のメカニズムについて語り合う。そんなシーンを想像した。
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